南八幡平山域沢旅◆PDF
2013/08/18 Sun 16:00:00 [edit]
【山行場所】葛根田川遡行~北ノ俣遡行~関東沢下降~大深沢遡行~東ノ俣沢遡行~明通沢下降
【山行月日】平成25年8月14日~17日
【参加者】CL辻本 渡辺(三) 橋本 石橋 吉川 明官(会員外)
辻本:記
八幡平山域は、秋田・岩手両県にまたがる広大な火山性山群をいう。東の茶臼岳,西の栂森,焼山,南のモッコ岳,大深岳などの山々が繋がる。おもに輝石安山岩の厚い溶岩流と火山灰層からなり,アオモリトドマツやブナの原生林、沼や湖沼が点在し,これらをとりまいて広大な高層湿原が展開している。今回の沢旅は、八幡平南部の山々を源とする沢を繋いで、2泊3日の遡下行を楽しんだ。
[ナイアガラの滝]
8月13日夜、千葉~市川を経由し、ミニバンに人間6名とザックなどを満載にして、2名ずつ3組に分け交代運転で東北道は盛岡ICに向かった。盛岡市内の24時間営業のスーパーで食料を買い出し、雫石から葛根田川に並走しながら、滝の上温泉駐車場にある休息所に着いたのは午前4時頃。早々に仮眠。
8月14日 快晴 6時半起床。
先週、秋田・岩手方面を襲った豪雨の傷跡もなく、川の水量も平水。3日分の食料、タープ、ザイルなど重いザックを肩に食い込ませ、地熱発電所構内の道路を入渓点に急ぐ。
多少、入渓点に迷ったが8時半過ぎ、早瀬が白く輝く葛根田川に入渓する。ザックが重く1mほどの堰堤を越せない。笑い声が川に響く。葛根田川は手つかずの森から滔々と水を集め、悠久の流れとなる。右に左に渡渉を重ね、段々と川は隘路になってくる。瀞場ではピュアグリーンの透明度に感激し、岩盤を深く抉った落ち込みの水の白さにも感激と、胸を躍らせながらの遡行が続いた。
下降に使う明通沢が滝となって出合うと、葛根田川の名所「お函」が始まる。過去に足を滑らせて流れに巻き込まれ、死亡事故もあった所だ。メンバーにもそれを伝え、慎重さをお願いする。
ナメ床が続き、滝が出だすと、お函は終了。大石沢、中ノ俣沢を過ぎると葛根田川は北ノ俣沢と名前を変える。葛根田大滝は左岸に明瞭な巻き道がある。ここを過ぎると、滝ノ俣沢出合いのテン場まで、ゴーロ歩きだ。テン場には1時過ぎに着いた。
テン場は左岸に造成された宅地のように、広がっている。ここで数パーティに会うのが普通だが、数日前の土砂災害ニュースのおかげか、我々1組だけ。タープを張り終えても、未だタップリと時間があるので、談笑、昼寝、岩魚釣りと思い思いの時間を過ごした。
岩魚釣りの尺クラスを交え、8匹の大釣果。焚火と夕食の準備が始まる。岩魚を捌き、塩焼き用は一人1匹ずつ。大物はもちろん刺身。小ぶりサイズは骨酒にと岩魚づくしの夜だった。
8月15日 快晴 6時45分出発
昨日は、千葉から夜通し走ったことを考慮し、テン場まで軽めの遡行で終えた。今日は北ノ俣沢を詰め、八瀬森湿原から関東沢を下り、大深沢を遡行し、992mのテン場までの長丁場。ハイライトは大深沢のナイアガラの滝。
滝ノ俣沢と別れると10分ほどで左に滝が現れる。北ノ俣沢左俣だ。これを登り大石のゴーロを過ぎると、水量が少なくなり、緩やかな流れとなる。ブナ林に囲まれた癒されるナメ床が続く。しかしなかなか高度が上がらない。950mあたりから右の斜面にスラブ滝が出てくるようになると、行く手に10mほどの崩れやすい滝が現れる。ここはザイルを出して登った。やがて1050mの二俣となるが、これを左に入ってしまった。
沢形が消え、急なヤブとなり、笹や木を掴みながら泥壁を登る。台地上に上がってもヤブが続き、GPSで登山道を探しながらヤブを掻き分け進むと、1130m付近の湿原にパッと出た。湿原に出た安堵感と、1050mで左に入ってしまった悔しさが錯綜した、微妙な気持ちでザックを下し、暫しの休息をとった。その後、1145mにある八瀬森山荘を表敬訪問。山荘は綺麗に掃除が行き届き、寝具も干してあった。
いよいよ関東沢へ下る。関東沢下降は私にとって未知の領域。5年前、八瀬森湿原で嵐に合い、関東沢下降を諦めて登山道をエスケープし、滝の上温泉に戻った悔しい記憶が甦る。
今回の沢旅が好天に恵まれたことに感謝する。
湿原を下ると簡単に沢形が現れ、迷うことなく関東沢右俣右沢を下降する。沢は時々ナメ床も現れるが、総じて平凡な渓相である。11時過ぎ、1005mの関東沢本流との出合いで、休息と行動食を摂る。
私自身、大深沢の出合い手前で転倒し、50cmほど落ち、顔面の左側と、左腕、脇腹を打った。メガネが壊れ、左眉あたりが切れ、出血。腕も見る見るうちに腫れだし、骨折を疑ったが指が動くので、強い打撲かヒビが入ったのだろうと推測。Iさんが止血処置と、腕をテーピングで巻いてくれた。足は何ともないので、痛み止めを飲み、遡行を継続した。
この転倒は疲れからか、足が上がっていなかったことに起因する。ザックの中身も重く、知らず知らずにバランスが悪くなっていた。6月後半から毎週、沢に入り続けた連戦の疲れが、溜っていたのだろう。今回のヒヤリハットである。
13時10分、大深沢に出合う。ここから標高差にして100mほど遡行すれば、仮戸沢出合いのテン場。しかし大深沢は水量が多く、出てくる滝も、越えねばならない石も大きい。
ナイアガラの滝まで1時間もかかった。
ナイアガラの滝の美しさに、皆が驚嘆の声を上げ、ここまでの疲れを吹き飛ばす。これが見たくて、遥々、2日もかけやってきたのだ。怪我もしたが、沢旅の喜びの一瞬だ。沢登りは本当に楽しい。
この滝を上がれば5分でテン場。気持ちを緩めて、滝の周辺で岩魚釣りに興じる。
5人で釣り上げた岩魚は、本日も大漁。今日は刺身とソテーだ。
皆、満足げな顔で、三ちゃんがセットしてくれたロープで滝を登り、テン場へ向かった。
ナイアガラの滝落ち口は、黒い岩盤に水飛沫が輝く。これで3度目だが、毎回、心が躍りはしゃいでしまう。仮戸沢に入って直ぐのテン場にタープを張る。3年前と同じ佇まいができた。
8月16日 薄曇り 7時30分出発
今日は東ノ俣沢を遡行し、明通沢を下降する。目標は1350m付近の湿原にピッタリ出ること。過去2回、水線通しに導かれ、藪漕ぎへ持って行かれた苦い経験がある。今回こそはと気合を入れて出発。
北ノ俣沢の綺麗なナメ滝を左に見送り、東ノ俣沢のナメ床を快調に登って行く。時々大きな釜も現れ、膝まで浸かった遡行となる。ゴーロ歩きに飽きた頃、この沢で唯一のゴルジュが出現。小滝は右岸を上る者、左岸を上がる者に別れ、自由なコースを取りながら、ゴルジュを通過した。
沢幅がグッと狭くなると1252mの二俣。ここは右に歩を取る。1300mの二俣も右。その先の小さな枝沢を見逃し、水量が多い方へ持って行かれる。やがて沢は蛇行を繰り返し、最後は蜜藪に突入。そして湿原ではなく、1390m付近の登山道に飛び出した。水のある方へどうしても進んでしまう。これは仕方がない沢屋の習性。山に「残念ね、またおいでよ」と誘われているようだ。
次は明通沢の下降だ。登山道を1283m付近まで進み、藪に突入。10mほど藪を漕ぐと湿原に出た。コンパスを合わせ、湿原の端から再び藪に突入(11:40) これも直ぐに沢形が現れ、明通沢左俣の下降となる。段々と沢幅が広がり水量も多くなり、1070mで枝沢と合わさると、懸垂が必要な滝が次々に現れる。6回の懸垂を過ぎると、明通沢の本流に出合う。(14:35)
沢はさらに水量が多くなり、越えるのに辛い大石が沢幅いっぱいに広がるようになる。渡渉も慎重さが要求され、疲れが倍加する。
葛根田川のお函のような壁は、落ちると深い釜が待っている。念のためザイルを出して通過。
長い下降に嫌気が出始めた頃、林道の橋が登場。思わず安堵感からか、記念写真を撮った。
(16:05)登山道から4時間20分をかけて、明通沢を下降した。橋の上で暫しの休憩を取り、藪で茫々の廃道を滝の上温泉に向け、下山の途についた。17時15分、藪道を抜け地熱発電所に到着。宿泊地の滝の上温泉滝峡荘に着いたのは17時40分。入浴を済ませ、用意したビールで乾杯!素麺で腹を満たし、無事、2泊3日の沢旅を終えた満足感からか、楽しみにしていた地酒も飲まず、寝入ってしまった。
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【山行月日】平成25年8月14日~17日
【参加者】CL辻本 渡辺(三) 橋本 石橋 吉川 明官(会員外)
辻本:記
八幡平山域は、秋田・岩手両県にまたがる広大な火山性山群をいう。東の茶臼岳,西の栂森,焼山,南のモッコ岳,大深岳などの山々が繋がる。おもに輝石安山岩の厚い溶岩流と火山灰層からなり,アオモリトドマツやブナの原生林、沼や湖沼が点在し,これらをとりまいて広大な高層湿原が展開している。今回の沢旅は、八幡平南部の山々を源とする沢を繋いで、2泊3日の遡下行を楽しんだ。

[ナイアガラの滝]
8月13日夜、千葉~市川を経由し、ミニバンに人間6名とザックなどを満載にして、2名ずつ3組に分け交代運転で東北道は盛岡ICに向かった。盛岡市内の24時間営業のスーパーで食料を買い出し、雫石から葛根田川に並走しながら、滝の上温泉駐車場にある休息所に着いたのは午前4時頃。早々に仮眠。
8月14日 快晴 6時半起床。
先週、秋田・岩手方面を襲った豪雨の傷跡もなく、川の水量も平水。3日分の食料、タープ、ザイルなど重いザックを肩に食い込ませ、地熱発電所構内の道路を入渓点に急ぐ。
多少、入渓点に迷ったが8時半過ぎ、早瀬が白く輝く葛根田川に入渓する。ザックが重く1mほどの堰堤を越せない。笑い声が川に響く。葛根田川は手つかずの森から滔々と水を集め、悠久の流れとなる。右に左に渡渉を重ね、段々と川は隘路になってくる。瀞場ではピュアグリーンの透明度に感激し、岩盤を深く抉った落ち込みの水の白さにも感激と、胸を躍らせながらの遡行が続いた。
下降に使う明通沢が滝となって出合うと、葛根田川の名所「お函」が始まる。過去に足を滑らせて流れに巻き込まれ、死亡事故もあった所だ。メンバーにもそれを伝え、慎重さをお願いする。
ナメ床が続き、滝が出だすと、お函は終了。大石沢、中ノ俣沢を過ぎると葛根田川は北ノ俣沢と名前を変える。葛根田大滝は左岸に明瞭な巻き道がある。ここを過ぎると、滝ノ俣沢出合いのテン場まで、ゴーロ歩きだ。テン場には1時過ぎに着いた。
テン場は左岸に造成された宅地のように、広がっている。ここで数パーティに会うのが普通だが、数日前の土砂災害ニュースのおかげか、我々1組だけ。タープを張り終えても、未だタップリと時間があるので、談笑、昼寝、岩魚釣りと思い思いの時間を過ごした。
岩魚釣りの尺クラスを交え、8匹の大釣果。焚火と夕食の準備が始まる。岩魚を捌き、塩焼き用は一人1匹ずつ。大物はもちろん刺身。小ぶりサイズは骨酒にと岩魚づくしの夜だった。
8月15日 快晴 6時45分出発
昨日は、千葉から夜通し走ったことを考慮し、テン場まで軽めの遡行で終えた。今日は北ノ俣沢を詰め、八瀬森湿原から関東沢を下り、大深沢を遡行し、992mのテン場までの長丁場。ハイライトは大深沢のナイアガラの滝。
滝ノ俣沢と別れると10分ほどで左に滝が現れる。北ノ俣沢左俣だ。これを登り大石のゴーロを過ぎると、水量が少なくなり、緩やかな流れとなる。ブナ林に囲まれた癒されるナメ床が続く。しかしなかなか高度が上がらない。950mあたりから右の斜面にスラブ滝が出てくるようになると、行く手に10mほどの崩れやすい滝が現れる。ここはザイルを出して登った。やがて1050mの二俣となるが、これを左に入ってしまった。
沢形が消え、急なヤブとなり、笹や木を掴みながら泥壁を登る。台地上に上がってもヤブが続き、GPSで登山道を探しながらヤブを掻き分け進むと、1130m付近の湿原にパッと出た。湿原に出た安堵感と、1050mで左に入ってしまった悔しさが錯綜した、微妙な気持ちでザックを下し、暫しの休息をとった。その後、1145mにある八瀬森山荘を表敬訪問。山荘は綺麗に掃除が行き届き、寝具も干してあった。
いよいよ関東沢へ下る。関東沢下降は私にとって未知の領域。5年前、八瀬森湿原で嵐に合い、関東沢下降を諦めて登山道をエスケープし、滝の上温泉に戻った悔しい記憶が甦る。
今回の沢旅が好天に恵まれたことに感謝する。
湿原を下ると簡単に沢形が現れ、迷うことなく関東沢右俣右沢を下降する。沢は時々ナメ床も現れるが、総じて平凡な渓相である。11時過ぎ、1005mの関東沢本流との出合いで、休息と行動食を摂る。
私自身、大深沢の出合い手前で転倒し、50cmほど落ち、顔面の左側と、左腕、脇腹を打った。メガネが壊れ、左眉あたりが切れ、出血。腕も見る見るうちに腫れだし、骨折を疑ったが指が動くので、強い打撲かヒビが入ったのだろうと推測。Iさんが止血処置と、腕をテーピングで巻いてくれた。足は何ともないので、痛み止めを飲み、遡行を継続した。
この転倒は疲れからか、足が上がっていなかったことに起因する。ザックの中身も重く、知らず知らずにバランスが悪くなっていた。6月後半から毎週、沢に入り続けた連戦の疲れが、溜っていたのだろう。今回のヒヤリハットである。
13時10分、大深沢に出合う。ここから標高差にして100mほど遡行すれば、仮戸沢出合いのテン場。しかし大深沢は水量が多く、出てくる滝も、越えねばならない石も大きい。
ナイアガラの滝まで1時間もかかった。
ナイアガラの滝の美しさに、皆が驚嘆の声を上げ、ここまでの疲れを吹き飛ばす。これが見たくて、遥々、2日もかけやってきたのだ。怪我もしたが、沢旅の喜びの一瞬だ。沢登りは本当に楽しい。
この滝を上がれば5分でテン場。気持ちを緩めて、滝の周辺で岩魚釣りに興じる。
5人で釣り上げた岩魚は、本日も大漁。今日は刺身とソテーだ。
皆、満足げな顔で、三ちゃんがセットしてくれたロープで滝を登り、テン場へ向かった。
ナイアガラの滝落ち口は、黒い岩盤に水飛沫が輝く。これで3度目だが、毎回、心が躍りはしゃいでしまう。仮戸沢に入って直ぐのテン場にタープを張る。3年前と同じ佇まいができた。
8月16日 薄曇り 7時30分出発
今日は東ノ俣沢を遡行し、明通沢を下降する。目標は1350m付近の湿原にピッタリ出ること。過去2回、水線通しに導かれ、藪漕ぎへ持って行かれた苦い経験がある。今回こそはと気合を入れて出発。
北ノ俣沢の綺麗なナメ滝を左に見送り、東ノ俣沢のナメ床を快調に登って行く。時々大きな釜も現れ、膝まで浸かった遡行となる。ゴーロ歩きに飽きた頃、この沢で唯一のゴルジュが出現。小滝は右岸を上る者、左岸を上がる者に別れ、自由なコースを取りながら、ゴルジュを通過した。
沢幅がグッと狭くなると1252mの二俣。ここは右に歩を取る。1300mの二俣も右。その先の小さな枝沢を見逃し、水量が多い方へ持って行かれる。やがて沢は蛇行を繰り返し、最後は蜜藪に突入。そして湿原ではなく、1390m付近の登山道に飛び出した。水のある方へどうしても進んでしまう。これは仕方がない沢屋の習性。山に「残念ね、またおいでよ」と誘われているようだ。
次は明通沢の下降だ。登山道を1283m付近まで進み、藪に突入。10mほど藪を漕ぐと湿原に出た。コンパスを合わせ、湿原の端から再び藪に突入(11:40) これも直ぐに沢形が現れ、明通沢左俣の下降となる。段々と沢幅が広がり水量も多くなり、1070mで枝沢と合わさると、懸垂が必要な滝が次々に現れる。6回の懸垂を過ぎると、明通沢の本流に出合う。(14:35)
沢はさらに水量が多くなり、越えるのに辛い大石が沢幅いっぱいに広がるようになる。渡渉も慎重さが要求され、疲れが倍加する。
葛根田川のお函のような壁は、落ちると深い釜が待っている。念のためザイルを出して通過。
長い下降に嫌気が出始めた頃、林道の橋が登場。思わず安堵感からか、記念写真を撮った。
(16:05)登山道から4時間20分をかけて、明通沢を下降した。橋の上で暫しの休憩を取り、藪で茫々の廃道を滝の上温泉に向け、下山の途についた。17時15分、藪道を抜け地熱発電所に到着。宿泊地の滝の上温泉滝峡荘に着いたのは17時40分。入浴を済ませ、用意したビールで乾杯!素麺で腹を満たし、無事、2泊3日の沢旅を終えた満足感からか、楽しみにしていた地酒も飲まず、寝入ってしまった。
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